「編集部にイラストを持ち込みに行く 電話編」

先日、製本作業が無事に終了して、イラストック2009がようやく完成しました!購入申込をされた方は今週末から来週にかけて順次お届けしますので、少しお待ちください。各企業様への無償配布の発送準備も順調にすすんでいます。今年も全国の2500件以上の企業へ配布されます。

さてさて、先週に引き続き、持ち込みのまとめをアップします。きょうは「電話編」です。次回の更新「実践編」でまとめは完結となります。


【編集部にイラストの持ち込みに行く 電話編】


★まずはじめに

編集さんは忙しい業務のあいだをぬって、わざわざ時間をつくってイラストを見てくれます。ひとりの社会人として、感謝の気持ちを忘れないように。必要以上にへりくだることはないが、反面、横柄な態度では話になりません。普段よりも少していねいに話してみるといいかも。

前述のとおり、編集さんは毎日締め切りに追われたりでたいへんです。持ち込みを受け付けていない編集部が多いと思いますので、断られてもいちいち落ち込まないこと。ファイルを送ってみましょう。


★持ち込みは苦手...な人はこれ!

イラストの持ち込みは数をこなすことがいちばんです。かといって、営業とか苦手なんだよなあという人もたくさんいると思います。そういう人は、まずは電話して会う約束をしてしまって、日に3、4件くらい訪問をする強行スケジュールを立ててしまえばよいです。約束をして逃げ道をなくすことで、嫌々ながらも行くしかなくなりますから(笑)

ここで大事なのは、1日1件にしないこと。日に3件くらいの約束が入っていると、次に行かないと間に合わないので、いちいち落ち込む無駄な時間がありません。とりあえず一度に3件くらいこなしてみて反省会をしてください。これを続けてると徐々に慣れてきます。


■電話をしてアポイント(会う約束)を取る■


★電話をかける前に

1.調べた編集部の連絡先に間違いないか再確認する
2.編集部ではどんな本を出していて、どんなイラストが使われているのかを再確認する

だいたいネットで調べられると思います。

あと、電話をする時間にも気をつけましょう。午前中(あれこれ忙しい)と16時以降(終業時間前)はなるべく電話しないほうがいいと思います。14時ごろから16時までの時間に電話するのがおすすめです。相手が忙しくないであろう時間に電話をかけましょう。はじめに書きましたが、編集さんは忙しい業務のあいだをぬって、わざわざ時間をつくってくれるんだということを忘れないように。相手の立場に立って考えましょう。


★社会人としての話法を身につける

何度もこのブログで言及していますが、イラストレーターは(会社に属していない場合は)自営業者であり、ひとりの社会人です。社会人としての基本的なルールを身につけておきましょう。絵さえうまければ仕事になるだろう・・・という歪んだ楽観はしないほうがよいです。絵もうまいし社会人としてのマナーも身につけている人もたくさんいます。

社会経験のない人にはなかなか想像しづらいでしょうけれども、社会人としてのマナーは特別に難しいものでもありません(と思います・・・)。普段、生活しているなかで話す言葉を意識的にていねいに、簡潔にするだけで最低限のレベルでは対応できると思います。

かくいう筆者もビジネスマナーにはえらく疎く、最低限レベルしか身についていませんが(笑)

イラストレーターとして仕事をするうえでは、最低限のレベルの社会人としてのマナーを身につけていれば大丈夫だと思います。身近な社会人の人と話をしてみるとか、お風呂で練習したりとか、とにかく声を出して練習すること。声に出すと身体が慣れてきます。身体が慣れると自然に言葉が出てくるようになります。

ていねいに、簡潔に話すことを意識して、声を出して練習していれば大丈夫かなと思います。次の記事を読んで、参考にしてみてくださいね。

※次の電話シミュレーションで使っている言葉は、最低限のマナーをふまえただけでほとんど口語に近くしているつもりです。これくらいならば失礼じゃないだろうなという最低限のラインを想定しています。


★電話の一例 持ち込み不可のところ

イラ「お忙しいところ失礼します。イラストレーターの○○と申します。御社(おんしゃ)の編集部で出版されている本を見てお電話しました。イラストの持ち込みをして見ていただきたいのですが、ご担当の方はいらっしゃいますでしょうか」

編集「すいません、弊社(へいしゃ)ではイラストの持ち込みを受け付けていません。お手数ですがイラストのファイルをお送りいただけますでしょうか。」

イラ「わかりました、編集部様あてにさっそくお送りしますのでよろしくお願いします。」

編集「届きましたら見せていただいて、機会があればこちらからご連絡を差し上げることもあると思います。よろしくお願いします。」

イラ「お忙しいところありがとうございました。失礼します。」


★電話の一例 持ち込み可のところ

イラ「お忙しいところ失礼します。イラストレーターの○○と申します。御社(おんしゃ)の編集部で出版されている本を見てお電話しました。イラストの持ち込みをして見ていただきたいのですが、ご担当の方はいらっしゃいますでしょうか」

編集「少々お待ちください...お電話代わりました。」

イラ「お忙しいところ失礼します。イラストレーターの○○と申します。御社の編集部で出版されている本を見てお電話しました。イラストの持ち込みのことでお聞きしたいのですがよろしいでしょうか。」

編集「イラストの持ち込みは受け付けていますよ、どんな絵を描かれているんですか」

イラ「御社編集部で使われているような、コミック系とかマンガのタッチの絵を描いています。見ていただいて使っていただければと思っています。」

編集「わかりました。では○○日の○○時に編集部にお越しいただけますか。」
(こちらから希望の時間を伝えてもよいが、編集さんの都合に合わせること)

イラ「ありがとうございます。○○日の○○時にお伺いします。どちらをお訪ねすればよろしいでしょうか」

編集「編集の○○までお願いします。」

イラ「○○様ですね、わかりました。よろしくお願いします。お忙しいところありがとうございました。失礼します。」


★持ち込みOKのところはそれほど多くない

かもしれません。月刊「フェーマス」に連載されている「クリエイティブワークの現場」というコーナーの取材に同行していろいろな編集部を訪問する機会があるのですが、読者のみなさんもご存知のとおりイラストの持ち込みを受け付けている編集部さんはさほど多くはありません。その理由はひとえに、編集という業務がひたすらに忙しく、時間が空くことがほとんどないからです。

しかし、電話をかけてみなければわからないもの。持ち込みを歓迎している編集部はもちろんありますし、持ち込み担当の方がいる編集部もあります。躊躇したりあれこれ悩んだり必要以上に調べたりする前に、まず電話をして聞いてみましょう。

特例中の特例、といった非常に珍しいパターンではありますが、編集部でちょうどイラストレーターを探していて、持ち込みに行ったところすぐに仕事につながったことがあるというイラストレーターの話も聞きます。しかしながら多くの場合はすぐに仕事につながることはありません。まず先に企画があって、その企画に合うイラストを探しているというときには、ファイルを見て連絡をくれることもあります。

とにかく電話をしてみなければわからない。どこにかけても「ファイルを送って」だよ・・・と落ち込む時間があったら、調べたところ全部にまずは電話してみましょう。会ってくれるところがきっとありますよ。


★なぜ持ち込みをしたほうがよいのか

人によっては慣れない電話をしたり、何件かけても「ファイルを送ってください」だったり、なかなか持ち込みOKしてくれるところがないなあ、と落ち込むこともあると思います。そこであきらめてしまうか、断られても次々と新しいところに電話できるだけの根気があるかが、勝負の分かれ目かもしれません。

就職活動だって同じだと思います。30社とか40社、人によっては100社以上の入社試験を受けることもある。それでも内定をもらえるのが数社しかなかったという話もあります。めちゃくちゃ単純化してしまうと、イラストの持ち込みも同じような確率の話です。

なぜそこまでしてイラストの持ち込みにこだわるのか、それは実際にイラストを使う現場の編集の方に絵を見てもらえるすごい機会だからです(しかもタダで)。イラストを描く者どうしで見せ合うのは楽しいし技術の向上も図れますが、実際に絵の仕事をするときに、どういうところがポイントになってどういうイラストが好まれるのか、それは編集の方に直接聞くことで知ることができます。現場の意見を素直に聞いて、よく理解したうえでイラストを描くと、驚くほど絵が変わります。激変します。めっちゃうまくなります。「使える」イラストに変わります。

そうすると、当然のことながら絵が編集さんの目にとまるようになります。目にとまるようになると仕事につながる可能性も必然的に上がっていきます。

あと、編集の方と知り合いになることができます。実際にイラストの仕事をするようになると「編集の方と知り合い」という価値がぐーんと上がります。知り合いの編集の方が、他の編集部や他の会社の編集部の方を紹介してくれて仕事になることもあります。いわば「芋づる式」です。


★ファイルを送ってください

「ファイルを送ってください」は脈なし・・・ではありませんよ!何度も書いているように、編集さんのお仕事はとにかく忙しいので時間が空きません。なので「ファイルを送ってください」と言われても落ち込まない!ていねいにファイルをつくって送りましょう。

編集部さんでは、持ち込みされたファイルを一箇所にまとめておき、イラストレーターを探すときに見られるようにしています。編集部の企画に合うイラストであれば、送ったファイルを見て連絡が来るようになっています。

これも先ほどの話と同じで、ファイルを送った出版社・編集部の数が多ければ多いほど、ファイルを見てもらえる機会が増えます。少しでも仕事につながる確率を上げていくことが、駆け出しのイラストレーターには必要です。